海外旅行におけるチップの豆知識について

チップにはその時、その場所によりそれぞれ「チップの常識」があり、臨機応変に対応していかなければならないのですが、基本的な考えとして「チップとはこんなものだ」と言うことを知っていただくため、様々な角度からお話し致します。

物乞いに対しての地元の人の考え

特に日本人は無宗教と呼べる人が多く、何かの宗教を深く信仰する人が少ないので理解しにくいことかもしれませんが、世界各国では宗教の教えに深く帰依した生活を送っている人は本当にたくさんいるのです。

キリスト教でもイスラム教でも仏教でも共通して「神が与え給う自分」であって、「神に感謝しながらの生活」が基本です。自分が食事にありつき、それなりの生活を送れるのも神がお与え下さった運命、だから運悪く貧困の生活を送っている者には、みんなで手を差し伸べなければいけないというニュアンスの考えが、言葉は違えど根底にあるのです。

特に仏教などでは「自分だけが」という考えを嫌い、貧しい人に喜捨することは、結果的に自分の人生を豊かにすると考えられています。ですから、物乞いに施しをすることは大変良いこと、進んでやらなければならないことだと信じられているのです。

そういう国では正直に言って、お金持ちを思われている外国人達が物乞いの前を全く無視して素通りする姿をよいものとして見ていません。文明に溺れて心が荒んだ人々として見ている部分もあるのです。だからと言って見かける物乞い全てに喜捨をする必要もないと思えるのですが、その国の人々の感情を損ねることのない慎重な行動を取るべきではないかと思えるのです。

日本人はどうしているか

海外訪問先で道端などにたたずむ物乞いの方々に対して、日本人はどういう態度を取っている人が多いかといいますと、ほとんどの方が無視しています。無視してはいるものの何も感じずに素通りするのではなく、また、お金を差し上げたくないという訳でもなく、「どう対応してよいか分からない」と言われる人が多いようです。

ただ、日本人的な言い分としては、身体障害を負っているなどの理由で、働きたくても働けない状況で仕方なく物乞いをしている人なら助けたいと思えるが、五体満足で働こうと思えば働けるのに、自分が怠け者だから物乞いをしている人は助けたくないと思うという人がかなりいました。確かに理に叶った言い分であると思えます。

喜捨はチップと同じで、渡すも渡さないも自分次第、金額にも相場はありません。ただ、日本と全く習慣の異なった外国を旅行するのに、全く無視し続けるというのも、その国の人々の日本人に対する考え方を悪くしますし、それ以上に無視が積み重なっていくと、自分の気持ち的にすっきりしない部分が出てくると思います。

そういうメンタルな部分も考慮すると、時と場合を考えた上で「こういう人なら助けたい」と思える人には少々のお金を渡すくらいの気持ちは持って対応した方が良いのではないかと思えます。

対処

物乞いの方々への対処として、多少のお金を差し上げたいとは思うけれど、そのあとが怖いと思っている人も多くいます。一人の人に差し上げると、そのあと自分の周囲にぞろぞろと集まってくるということもあるからです。

そういう人々の手を振り払う動作というのは、それを見ている人々に大変悪い印象を与えます。集まってきたと思ったら、その場から逃げる方が対応策としてはよいかと思います。

実際、物乞いの人にもいろいろな人がいて、「ニセ物乞い」の人もいるのです。アジア諸国では、いかにもかわいそうな人であることを演出するため、物乞いの人々の間で赤ちゃんを貸し借りしながら、子連れ物乞いを装ってみたり、本当はそれなりの所持金を持っているのに、貧しい身なりを装って、物乞いを商売にしている人もいるのです。

それだけに余計に全ての物乞いの人に喜捨をする必要はないと思えるのですが、喜捨は周囲の人々に「この人は良い人だ」と思われるために差し出すものではなく、自分自身の気持ちで差し出すものです。いわば、神社のお賽銭のような意味合いが大きいものです。ですから、できるだけ人目に付かない場所で、その人の幸せを願いながら、自分にできる範囲でひそやかに差し出すという方法が、自分の気持ち的にも、状況的にも一番ベストなやり方ではないかと思います。

日の丸

日本では海外旅行に出かけるというのは特別なことではなく、ごくごく普通のこととなってしまっているので、あまり感じないかも知れませんが、海外に出かけるというのは、滞在先がどんな先進国であろうと、「日の丸」を背負って出掛けると思って間違いはないかと思います。

その国に在住する人々、また、自分と同じようにその国を旅行している外国人は、もし、他の人に旅先で出会った自分についてのことを話題に取り上げて話をする時、必ず、「××で出会った日本人」という言葉を用いるはずです。その時点で日本人口一億強は「日本人」という、同じ枠でくくられることになっているのです。

人間は誰もが違う性格を持っているというのは現実ですが、こういう場合には間違いなく必ず同じ国民は同じ国民性を持っていると見られるはずです。ですから、チップを渡すという一つの行動に関しても、もっとずっと前から、外国に渡航する全ての人々が日本のイメージを損ねないように注意して行動を取る必要性があったのです。

中国では、特にヨーロッパ諸国を旅行する時に、外国で中国という国の名を汚すことのない、品行方正な行動が取れるように、「マナー教室」といった有料講義を受けることを義務付けられているようです。この講義を受講したと証明できない限り、旅行はできないのです。

この話を聞いた時、「さすが中国人」と言って笑って聞いていましたが、日本人も人のことは言えません。チップのことに関しては、特に国民性を知る材料にされている部分もあるので、例えば、外務省のHPなどでもこのことに対する指導を行っても、行きすぎた対策ではないかと思えるのです。

感情を表現する道具

現在多くの日本人は、チップに対してよい印象を持ってはいません。ですが、チップは差し上げることが当たり前と考えを改めることにより、自分の「感情を表現する道具」として、ある意味では旅行の楽しみの一つに繋がるようにできると思えるのです。

誰だってたくさんのチップを頂ければ、お金を貰ったということはもちろん、自分の仕事が評価されたと理解し、例外なく喜ぶと思います。ですから、考え方としては、例えば、会社に勤務していて上司に自分の為した仕事を評価され、お褒めの言葉を頂いた時と同じように、自分の感情をストレートに相手に伝えるための言葉と同じように用いるのです。

チップの金額と言うのは、どう物価の高い国であっても、どういう密度の濃いサービスを受けたとしても、1万円を上回るケースはごくごく稀だと思います。それは10万円入った財布を失くして届けてもらったとか、命を落としそうな危機に陥った時、それを救ってもらったとかは別問題になりますが、サービスへの感謝料としてのチップは、例えば、海外旅行で一番世話になることが予想される現地ガイドや、運転手などへのチップも最高でも一万円には満たない額だと思います。それ以外の小さな場面では100円、200円、せいぜい500円程度のことが多いのです。

ですから、旅行の計画の時点でチップの予算を決め、それをどれだけうまく使って、相手からよいサービスを受けられるかという、相手の幸せを作ることができるかという、ゲーム感覚でのチップのやり方もとても楽しいかと思います。

自分の感情をうまく相手に伝えるということは、簡単なようで結構難しいことであり、なかなかうまい伝達というのはできていない人が多いのですが、チップを通してこのことを学習することができれば、あなたの海外旅行はさらに意味合いの深いものとなるのでしょうか?

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